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作家 松沢直樹のブログ
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キャッシング比較
ならくらべる君

冷たい雨が鉄橋を叩く夜
電車が通るたび、店はかたかたときしむ。

テーブルもない
あるのは5人も座れば一杯のカウンターだけ

気の利いた肴はない。
あるのは、湿ったピーナッツだけ

贅を感じさせる酒はない。
あるのは、今日一日の出来事に麻酔をかけられる
強烈なウオッカだけ

洒落た会話を楽しむ者はいない。
聞こえてくるのは
この国のシステムに疲弊した嘆きと
明日の不安と怒号だけ

ラグジュアリーな香りを放つ花なぞない。
漂うのは安物のトワレと
客がぶちまけた小便と、ゲロの混ざったにおいだけ

まるでこの世のソドムとゴモラだ。

滅多なことでは動じない神父ですら、杯を重ねるたびに
思わず祈りを捧げる有様だ。

そんな中で彼女は笑う。

天井をゆする電車の音に笑い転げ
ウオッカを一気飲みして、トイレのドアを開けたまま
ゲロをぶちまける客を指差して、また笑い転げる。

乳房に手を伸ばした酔客の手を払いのけながら
毎日が楽しくてしょうがないと笑う。

「明日の希望なぞない」と嘆く人の前で、幸福だと笑う。

彼女はコロンビアから来たという。

毎日眠れる場所があって、働けば働くほどお金が手に入る場所を手に入れたから幸せなのだそうだ。

今は忙しすぎて何も考えられないけど、それも守られてるからじゃないかな。きっと今は時間があると色々なことで悩んでしまうと思うから。

そう言って彼女はウオッカを一杯だけあおった。
その後、彼女はまた笑い転げた。
目鼻立ちのはっきりした顔の中にある瞳は、いつのまにか警戒の色を消していた。

「日本は好き?」
「好きよ 危ない場所が少ないし、何でもあるし
 働けばお金も手に入るし。
 オトコはみんなムッツリスケベだけどね」

「お酒は好き?」
「好き、よく眠れるから」

「どんなお酒が好き?」
「お店の残りのウオッカ飲んでるよ。
 たまに贅沢してワイン飲むときもあるよ」

「眠れない日はある?」
「あるよ」

「どんなことで?」
「理由があることとか、ないこととか。
 なんとなく不安になるときって誰にでもあるでしょ?
 不安になるのも、考える余裕があるからよ。
 本当はそれだけ幸せなのよね」

心に深く突き刺すような
強い強い力をたたえた彼女の言葉を
無言のままウオッカと一緒に飲み干す。

今度は彼女の言葉を打ち返す。

「兄さんは、なぜこいつらみたいに、
 あたしのおっぱい触ろうとしない?」
「触りたいと思わないから」

「女よりもオトコが好きなの?」
「いや、女の人の方が好きだよ。
 だけど人を好きになるまで、すごく時間がかかるから」

「いっぱい秘密がある?」
「言葉にできないことを秘密というなら、
 たくさん持ってるね
 言葉になることは、できるだけ言葉にしようとしてるけど。
 まだまだたくさん、言葉にならないことがある」

「毎日一生懸命生きてる?」
「うん、僕は他の日本人が考えるみたいに80歳くらいまで、つつがなく生きられるとは思ってないから」

「どして?」
「うまく言えない」
「秘密なの?」
「そういうわけじゃない。うまく言えない」
「それを秘密っていうのよ」
「そうかもね」

「夢はある?」
「あるよ、いっぱい。自分の書いた話を本にすること。
 いくつかはかなえたけど。まだまだかなえたりない」

「毎日楽しい?」
「ほんの二年前までは、死ぬほど苦しかったけど、今は最高に 毎日が楽しいよ」

「なぜ苦しかったの?」

「大病して、仕事がなくなって、両親が死んで、おまけにお金 に困る羽目になったからかな」

「乗り越えた?」
「たぶんね」

「なぜ秘密を話してくれたの?」
「話したつもりはないよ。ウオッカのせいかもね」

「私の夢はね」

僕がショットグラスのウオッカを開けると、彼女は言った。

「コロンビアに残してきた子供と一緒に日本に住むこと。
 誰かの戸籍を借りて日本に帰化しようと思ってるの」

「うまくいきそう?」
「あとはお金ね」

このろくでもない世界のために祈ろう。

預言者の言葉を成就させるために
この世界を焼き払うために降りてくる
裁きの天使に救いを願おう。

何かを狂わす時計の針がこれ以上
進まないように

一緒にいるべき人がそばにいられるように

満たされない人が満たされるように

溢れるほど手にしたものを納める倉の中で
空しさに包まれる人たちが満たされるように

何かをゆがめる時計の針が
もうこれ以上進まないように

裁きの天使に祈ろう。
たぶん届くことのない声を張り上げて
この世界の底から祈ろう

 

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キャッシング比較
ならくらべる君

 
あたふたしている間に、日付変更線を越える時間になりましたが、締め切りが迫っているというのに、原稿真っ白状態っす。

企業の販促用漫画のシナリオ1本と、短編映像のシナリオ1本(漫画はシナリオっていうのかな)

映画のシナリオは何本も書いているので、それなりに勝手がわかるのだけど、漫画原作の仕事は経験がないから四苦八苦。

基本的に、最終的に漫画を起す漫画家の方に、ストーリーを伝える意思疎通が図れるものを渡せればいいんだろうけど、ビジネスの販促物コミックって、一般商業誌の漫画原作のお仕事とは、かなり温度差があるような気がする。

こういったところをうまく調整して、新たなスキルにしながら、なおかつ自分の持ち味を出せることが大事なんだろうね。

自分一人で全てを表現してしまう小説と違って、また違った苦労はあるけど、いい仕事になるように全力をつくしませう。


キャッシング比較
ならくらべる君
  

小田原まででかけて昼飲み。駅前の天金という割烹へ。

昼時の混んでる時間なのに、とびこみでも快く二階の座敷にあげてもらって恐縮する。
(自分の名前を出して座敷を融通してもらったわけじゃないよ。そのままとびこみで入ったら快く通していただいたので、念のため)

ぽつぽつと降り出した雨を眺めながら、箱根湯本の温泉を使った湯豆腐や、小海老のかき揚げ、刺身を肴に、ぬる燗を傾ける。

魚が矢鱈うまかったと思ったら、箱根湯本ホテルさんの直営で、お店自体が漁船を持っていて、相模湾で取れた魚を毎日出してるのね。なるほどどうりで。

東京に戻る際、いただいたパンフレットを見て一人で納得。

さてさて、楽しい時間に区切りをつけて、再び都内へ戻ったら、ものすごい雨風になってびっくり。台風みたいだ。

仕事先で、取材の準備をしていたんだけど、結局雨のせいで延期になってしまった。

しかたがないので、深夜一人オフィスに残って自分の作品を書きながら、昼間の酒を思う。

楽しくておいしい時間はあっという間に過ぎるものだ。それにしても、小海老のかき揚げとぬる燗が美味だったなあ。お店のカウンターの白板にかかれた「まとうだい 刺身」というおしながきに、後ろ髪をひかれたことを思い出す。

うむむ。仕事が延期になるんだったら、もう少し時間を延ばして、お猪口かたむけながら、まとうだいをいただきたかった。

東京湾より外海に面している小田原で上がった魚の美味さは、書くまでもないが、この時期に旬を迎えるまとうだいの白身は、また格別のあじわいがある。

新鮮なものは、刺身にして肝を和えるのが一番。カワハギの肝和えとは違った、ほのかな甘味と、こくのある風味が楽しめる。

火を入れるとさらに濃厚な旨みが生まれるので、奉書焼きや蒸し物も捨てがたい。

せっかく日本酒を飲んだのだから、試してみたかったね。

まとうだいという魚は、俗にいうあやかり鯛(鯛とは名前が付くものの、真鯛とは違った魚)だ。

銀色の体の側面に、矢の的のような大きな斑紋があることから、的鯛と呼ばれるようになったとか、馬のような顔をしているから馬頭鯛と呼ばれるようになったとか、様々な由来が伝えられている。

名前の由来は定かではないけど、日本では海で取れたおいしい魚に「鯛」と名前を付けるようなきらいがあるから、要は日本各地で食べられてきた魚ってことなんでしょうね。

このまとうだい、日本だけではなくて、外国でも古くから食卓をにぎわしてきた魚でもある。

オーストラリアを中心にした英語圏では、Target dory とか John doryと呼ばれて、極めて珍重されているし、フランスではsaint-pierre(サン・ピエール)という、キリストの十二使徒の「聖ペテロ」の名前がつけられている。

実際、フランス料理でもよく使われる食材で、ワインで蒸したものやポアレ(バターやオリーブオイルで皮に焼き色をつけて焼き上げたもの)にしたり、日本でもおなじみのブイヤベースに使ったりする。

ちょっとした華やかな雰囲気の手の込んだ料理から、素材の持ち味を生かす豪快な漁師料理にまで広く使われているから、美味さから珍重されるようになった魚というのは、日本と同じようだ。

それにしても、このまとうだい、なんでキリスト様のお弟子さんの名前がついてるのかね。
調べてみると、どうやら聖書のエピソード(マタイ伝)に由来するらしい。

漁師であったキリストの弟子であるペテロが、キリストとともに、カベナウムという街に来た時、神殿に納める税金を徴収されそうになった。

キリストは漁師だったペテロに「海で釣り針をたれると、最初につれた魚の口から銀貨が一枚みつかるから、それをおさめなさい」と伝えるのだけど、預言の通り、ペテロが釣った魚の口から銀貨が見つかったらしい。

その魚が「まとうだい」で、聖ペテロがまとうだいを手にした跡が、まとうだいの体の横にある大きな斑紋になったのだと、フランスをはじめとしたヨーロッパでは言われているらしい。ほんとかな? 聖書のその部分を引用してみませう。

彼らがカペナウムにきたとき、宮の納入金を集める人たちがペテロのところにきて言った、「あなたがたの先生は宮の納入金を納めないのか」。
 ペテロは「納めておられます」と言った。そして彼が家にはいると、イエスから先に話しかけて言われた、「シモン、あなたはどう思うか。この世の王たちは税や貢をだれから取るのか。自分の子からか、それとも、ほかの人たちからか」。
 ペテロが「ほかの人たちからです」と答えると、イエスは言われた、「それでは、子は納めなくてもよいわけである。しかし、彼らをつまずかせないために、海に行って、つり針をたれなさい。そして最初につれた魚をとって、その口をあけると、銀貨一枚が見つかるであろう。それをとり出して、わたしとあなたのために納めなさい」。


----日本聖書協会 新約聖書 1954年改訳版 マタイによる福音書17章24-27より引用-----

実際のところ、キリストの弟子であるペテロが釣りをしたのは、イスラエルにある真水をたたえた「ガリラヤ湖」なので、海水魚であるまとうだいが釣れることはない。

おそらく、ペテロが釣りあげたのは、川底の石を口にする習性のある淡水魚の「ティラピア(泉鯛とも言われて、日本でも養殖されている)」だろう。

ティラピアは、卵から返った稚魚を口の中で育てる習性があり、子育てが終わる時期になると、口に異物を含んで稚魚が口の中にもぐりこむのを防ぐ習性も持っている。
おそらくペテロが釣り上げたティラピアは、湖底に沈んだ銀貨を口にしていたのだろうね

それがまたどういったいきさつで、海に住むまとうだいが、聖ペテロの名前を冠するようになったのかは、残念ながらはっきりしていない。

ラテン語では、ギリシャ神話の最高神「ゼウス」の名前がつけられているから(ラテン語の学名ではゼウス・ファベルという)キリストが生きた時代にイスラエルを治めていた海洋国のローマ人が、キリストとペテロのエピソードを伝えるうちに、聖ペテロのエピソードにでてくる魚が、淡水魚のティラピアから、まとうだいに変わったんじゃないかな。

逆にいうと、ローマの時代から、食卓をにぎわすほどおいしい魚として親しまれてきたんだろうね。いわば西洋版の「あやかり鯛」というところだろうか。

日本では、「あやかり鯛」というと、うまい魚ではあるけど、鯛のような一流にはなれない魚といった意地悪な意味合いがある。

実際、まとうだいは、鯛のような見栄えのする魚ではないけど、美味さという点で言えば、濃厚な旨みを放つ光る個性を持っている。

自分も、そうありたいものです。

そして願わくば、自分の紡ぐ文章が、まとうだいのような個性のある旨みを醸して、聖ペテロの魚のように、銀貨を連れてきてくれる文章になりますように
(これをご覧の媒体様、メディア様、原稿の執筆依頼・取材依頼お待ちしております)

ああああ……せっかく真面目なお話が、急に俗っぽい話になってしまった。まあいいや。

桜の咲く頃までにはまた旨みがますだろうから、今度はまとうだいを肴に一杯いただきたいですな。頑張りましょう。

寒梅や
春までに散る身なれども
けふ咲かせうぞ
我が春の華


キャッシング比較
ならくらべる君
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スタッフのまかない作り終了

徹夜続きで食欲ないっす。なんかやる気しね~
世の奥様方の苦労がわかるきがするわ。

撮影で使った食材の賞味期限切れが迫っているので、一気に使うことに。

左から煮豚と蒸した白菜の添え物
(試作品をスタジオで冷凍しておいたものを解凍)

真ん中 粕汁
何入れたか自分でも不明(苦笑)
たぶん、スケジュールから御用済みになった食材からして、にんじん、こんにゃく、豆腐、まいたけ、ネギといったとこでしょうか。

右 春菊と山芋 津軽漬の和え物

いただいた津軽漬け(数の子と昆布とキュウリの和え物。青森の特産)を流用してみました。

皮をむいて、拍子木状に刻んだ山芋を酢水にさらします。
熱湯で茹でて冷水に取った春菊に、山芋を漬けた酢水を絡ませて、よく水気を絞り、切りそろえて盛り付けます。

山芋と春菊を皿に盛り、津軽漬けを回しかけます。

山芋が酢水に漂白されてすごく真っ白になってきれいだこと。
つい、つまみぐいしたら、津軽漬とマッチしていてすごくうまい。酒の肴にもよさそうだ。
そういえば、山芋も青森産だったな。同じ場所で取れた食べ物は相性がいいのかもしれないね。

これは、僕がお土産にいただいたんだから、他の輩には食わせまい。うひひ。
晩飯代わりに、これを肴に一杯やりながら、仕事を続けますか。(ストレスマックスだから、ただ飲みたいだけだったりして)



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プロフィール
HN:
松沢直樹
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1968/03/03
職業:
著述業
趣味:
冬眠
自己紹介:
沈没寸前のコピーライター ライターです。ヤフーではなぜか「小説家」のカテゴリにHPが登録されてますが、ぢっと手を見る日々が続いております。
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