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作家 松沢直樹のブログ
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10月27日に公開になる映画作品「犯人に告ぐ」のプレミアム試写を鑑賞してきました。

小説家 雫井脩介氏原作ミステリの映像化作品ですが、ずっと楽しみにしてました。なにせ、原作のクオリティがおそろしく高い作品ですからね。

いくつもの伏線が存在する中で、「見えない犯人」を追い詰めていくという、ミステリ小説の王道とも言えるストーリーを本流に、警察内部の対立から起こる捜査妨害や様々な人間模様を見事に描ききった作品。原作を何度も読みましたが、「はたしてこれだけの作品を、原作のエッセンスを生かしたまま、映像化できるのか?」と思うほど、精緻で豪腕な作品ですね。

事実、原作は‘04に刊行された文芸作品の中でも、圧倒的な読者の支持を得ています。

圧倒的な作品は、何度も読みたくなるのが本好きの性。何度も原作を読み込むと、自分の中で物語世界が出来上がってしまうので、既に自分の中で出来上がった世界を超える映像が見られるかどうか、一抹の不安を感じながら試写に参加させていただいたのですが……いやいやいや、心配は無用でした。原作のエッセンスを見事に映像化した作品でした。

ストーリーの本流であるミステリはもちろん、この作品のもう一つの魅力になっている、警察内部の人間模様や内部対立を一つの絵として描ききっていました。

まずは、ネタバレにならない程度にストーリーの概略を。

 

神奈川県警の警視・巻島史彦(豊川悦司)は、神奈川県西部にある足柄署で、現場を指揮する毎日を送っていた。部下たちは巻島に尊敬の念を抱いていたが、巻島が6年前に担当した「ある事件」の責任を取る形で、足柄署に左遷されたことを知る者はいなかった。

ある日、神奈川県警本部から呼び出された巻島は、県警本部長に昇進したかつての上司「曽根要介(石橋凌)と再会するが、心中は穏やかではなかった。曽根こそ、6年前に足柄署に左遷されるきっかけとなった「ある事件」の最高責任者だったからだ。

警視庁との合同捜査の対立から生じた捜査ミス。そして、自分の中に浮かび上がってくる救えなかった6年前の「ある事件」の被害者への思いに、痛みを感じる巻島。そんな巻島に、曽根は川崎で発生した連続児童誘拐殺害事件の特別管理官として、捜査の陣頭指揮を取るように命じた。期せずして、6年前の事件は、新たな方向へつながっていくことになる。

BADMANを名乗り、次々と児童を誘拐しては殺害を繰り返す犯人。大量の捜査員を投入して半年以上の捜査が続けられていたが、捜査本部は容疑者の手がかりすらつかめない状態が続いていた。足柄署で部下となった定年間近の刑事「津田良仁巡査長(笹野高史)」を連れ、特別捜査官として赴任した巻島は、深夜のニュース番組「ニュースナイトアイズ」に出演し、BADMANに対して挑発的な呼びかけを行う。

劇場型捜査という批判を浴びながらも、BADMANからのコンタクトを得ることに成功する巻島。

だが、初期から捜査に参加している捜査員たちは、急展開を勝ち得た巻島に、醒めた態度を隠し切れなかった。内部分裂が起きかねない状態の中、今度はあからさまな妨害が巻島を襲う。

巻島の暴走に上司の面子を潰された植草壮一郎警視(小澤征悦)が、ニュースアイズと対立する番組のニュースキャスター「杉村未央子(片岡礼子)に、情報提供をちらつかせたのだった。巻島は一転して、マスコミから猛烈な批判を受けることになる。

ついに、社会からも批判を浴びるようになってしまった巻島は、ついに、BADMANとの唯一のコンタクト手段であった、ニュースアイズに出演することがかなわなくなってしまう。

絶対絶命に陥る巻島。だが、新たに入手した手紙から、BADMANの居所を特定し、逮捕に至る方法をつかんだ巻島は、単身ニュースアイズのスタジオへ向かい、強引に番組への出演を果たす。そして巻島は、日本中の視線を一身に浴びながらカメラに向けて言い放った。

「犯人に告ぐ。お前はもう逃げられない。今夜は震えて眠れ」

 この作品の魅力は、ミステリとしての完成度の高さと、人物像の濃さですが、警察内部の対立を伏線として、ある場面では人間ドラマとして見事に描ききっていることも大きな魅力の一つでしょう。

原作と設定が少々違う部分もあるのですが、それが全く気にならないほど、見事な構築がされている映像だと思いました。

作品のサブテーマの一つとして、警視庁と神奈川県警の対立が描かれていますが、警察法の原則の関係で、県境を越えた捜査が難しい現状があります。
その問題から端を発して複雑な様相を見せている、首都を警備する警察としての自負を持つ警視庁と神奈川県警の対立を人間模様に託した表現は圧巻。

また、エンターテイメントとして見事に昇華されていますが、姿が見えない殺人犯を生み出してしまった、現代社会の歪みや、家族や地域社会とのつながりが希薄になる生活を鋭くえぐっていることも映像の見所でしょうね。

そして何より、俳優さんの演技がすごい。主演の豊川悦司さんはもちろん、石橋凌さん演じる数々の現場を経験して神奈川県警本部長のポストを手に入れた「曽根要介」、キャリア警察官「植草壮一郎」を演じる小澤征悦さん。そして、ストーリーの要所要所で意外な鍵を投げる足柄署から捜査本部に配属された刑事「津田良仁巡査長」を演じる笹野高史さん。

上げればキリがありませんのでやめますが、珠玉の演技を見せる俳優さんたちによって、原作の世界が「物語」ではなく、生きている人間の息吹が感じられる世界に昇華しているように感じました。

原作、映像作品どちらから鑑賞してもいいのでしょうけど、ぜひ両作品を鑑賞してほしいですね。

 

映画「犯人に告ぐ」

 

 

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プロフィール
HN:
松沢直樹
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1968/03/03
職業:
著述業
趣味:
冬眠
自己紹介:
沈没寸前のコピーライター ライターです。ヤフーではなぜか「小説家」のカテゴリにHPが登録されてますが、ぢっと手を見る日々が続いております。
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