忍者ブログ
作家 松沢直樹のブログ
[5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

[PR]10日間無利息
☆★ユアーズ☆★

 さすがに涼しくなったね

今年の夏場は、取材がらみの仕事でずっと
外を回ってたので、このお天気はありがたいんだけど
急激なお天気の変化はつらいよなあ。

それちゃったみたいだけど、台風が近づいてきてた時って
体調悪くて仕方なかったしさ
落ち着いたと思ったら、やはり取材で外に出て
あちこち動き回れば、蒸し暑さを感じる

かといって日が落ちたら
なんだか肌寒さを感じる時もあるよね
気をつけないと風邪ひきそうだ

そろそろ燗酒とか鍋物なんかが
恋しくなってきましたなあ

みなさんも夏の疲れとかでてませんか?
風邪ひかないように気をつけてくださいね。

PR
[PR]10日間無利息
☆★ユアーズ☆★

このブログじゃなくて、僕の個人サイト
Epsilon Cafeの携帯版HPが
http://homepage2.nifty.com/epsilon-cafe/i/

ヤフーモバイルに登録されました。

登録カテゴリは

ホーム>教養・カルチャー>芸実と人文>文学>作家
です。

携帯メインでサイトを閲覧される方は、
ぜひあそびにきてくださいね。

こちらのQRコードからもアクセスできます

Qrcode2

 

 

 

パソコンお持ちの方は、パソコン版HPのトップページ
http://homepage2.nifty.com/epsilon-cafe/

に貼ってあるQRコードからもアクセスできます

URL打ち込むのが面倒な方は、
ヤフージャパンで検索すると
「小説家」カテゴリにパソコン版HP登録されてますので、
すぐにアクセスできます。ご活用くださいませ)

携帯版HPは、まだあまり作りこんでないですけど、
コンテンツ充実していきたいと思います

よろしくお願いいたします。

ではでは

学校から帰ってきたら、母さんからよばれた。
階段をかけあがって、自分の部屋に入った時だった。
「さとし、リビングにおりてきなさい」

おっかない声だった。
ひょっとして、算数のテストをかくしてたのが
ばれちゃったのかな。

つくえのひきだしのおくにしまっておいたのに、
なんでばれたんだろ。
この前のテストは20点だったから、さいあくだ。

ぼくは、ランドセルをおいて、階段をおりた。
「どうしたの? 母さん」

おこられるのかな。でも、なんだか母さんのようすがへんだ。なきそうな顔をしてだまったままだ。
「どうしたの? 母さん、なんかへんだよ」

ぼくがそう言っても、母さんはソファに
すわったままだった。
父さんも、おじいちゃんも、ソファにすわったまま、
すごくこまった顔をしている。

そのうち、父さんが立ち上がった。
ぼくのところへやってくると、少ししゃがんで、
ぼくの目をまっすぐ見た。

そして、両手でぼくのかたをぎゅっとつかんだ。
「さとし、よく聞いてくれ。キキが死んでしまった」

父さんがそう言うと、母さんはなきだしてしまった。
「キキに会っておいで」

ぼくは、父さんにつれられて、リビングのすみまでそっと歩いた。
しゃがみこんで、キキのベットをのぞきこんでみた。

キキはねぼすけな黒ねこだ。この時間はいつもベットの中でぐうぐうねてる。

キキはいつものように丸くなって、わらった顔をしたまま
ねてた。

「キキ、ねてるだけだよ。いつもこうだもん」
「そうじゃないんだ」

父さんはそう言うと、ぼくのとなりにしゃがみこんで、
キキの体をなでた。

キキは、父さんになでられても、そのままだった。

いつもは、父さんになでられると、
とてもめいわくそうな顔をする。

そして、少しだけ目をあけて、うーんってせのびをする。

でも、父さんになでられても、わらったみたいな顔をして、
少しも動かなかった。

「お前もなでてあげてごらん」

父さんにそう言われて、ぼくもキキをなでてみた。
やっぱりせのびはしなかった。
わらった顔をして、ねたままだった。

なんどもなでてみたけど、やっぱりせのびはしてくれなかった。それでもぼくは、キキの体をなでつづけた。

「さとし、さみしいけど、キキは死んでしまったんだ」
父さんはそういうと、キキをなでているぼくの手を
そっとはなした。

「キキ、死んじゃったの?」
「ああ」

父さんも、少しだけなきそうな顔になってた。

「どれだけ死んだら、キキとまた遊べるの? 
死んでも、ふっかつのじゅもんをとなえたら
また遊べるようになるんでしょ。

父さんに買ってもらったテレビゲームのソフトだって、
何回死んでも、まほう使いがじゅもんをとなえたら、
生きかえるもん。

ぼくといっしょに戦ってる戦士もね、キキっていうんだ。
今まで3回生きかえってるよ」
「さとし、あのな……」

母さんが、わんわんなきだす声が聞こえた。

「キキは生きかえったりしないんだ。
テレビゲームみたいに、まほう使いが
生き返らせたりすることはできないんだ。

すごくすごくさみしいけど、今日でキキと
遊ぶことはできなくなったんだよ」

うそだよ。きのうの夜も、おねえちゃんと三人で、
ねこじゃらしであそんだもん。

スーパーボールで追いかけっこして遊んだもん。
おやつだっていっしょに食べたもん。
おねえちゃんといっしょに、うんちの世話もしたもん。

今日だって、ぼくが、ばんごはんをあげる当番だったから、
学校から急いで帰ってきたんだ。

ぼくは、父さんの手をはらいのけて、
キキの体を強くなでた。

ねえ、キキ、早く起きて
いっしょにあそぼうよ。
でも、キキはわらったような顔をしたままだった

そうだ。だいすきなチキンのジャーキーを
今日はとくべつにあげるよ。

ほら、起きてあそぼうよ。
でも、キキはわらったような顔をして、ねたままだった。
なんど体をゆすっても、
キキはわらった顔をしてねむったままだった。

「さとし、もうそっとしてあげよう。
キキは死んでしまったんだ」

父さんにそう言われて、
ぼくは、キキの体をゆするのをやめた。

 

おねえちゃんが中学校から帰ってきた後、
ばんごはんの前に、みんなでキキのおそうしきを
することになった。

おねえちゃんは、なかなかった。
母さんだって父さんだって、
おじいちゃんだってないたのに、
なんでおねえちゃんは、なかなかいんだろう。

キキが死んでも悲しくないのかな。

今日で、キキといっしょに、遊べなくなったのに。
いつもはとてもやさしいおねえちゃんが、
とてもざんこくに見えた。

父さんが庭のさくらの木の下に、
キキのおはかを作ってあげようって言い出した。

キキは、子ねこのころから、
庭のさくらの木に登って遊ぶのが
だいすきだったからだ。

母さんも、おじいちゃんもさんせいしてくれた。
ぼくもそれがいいと思った。
でも、すごくさみしくてたまらなくなった。

キキは本当に死んじゃったんだ。

まほうつかいでも、本当にキキを
生き返らせたりできないのかな。

一度だけでいいから、おねがいを
かなえてくれないかな。

みんなが、キキのおそうしきのじゅんびを
しているあいだ、ぼくは、
まほうつかいが来てくれないかと思って、
ずっと空を見ていた。

でも、父さんの言うとおり、
まほうつかいはやってきてくれなかった。

父さんが、物置に残っていた板で、
大きなはこを作ってくれた。

「これでいいかな。しっかり作ったから、
すごくがんじょうだぞ」

父さんは、そう言ってわらった。
でも、すごくさみしそうだった。

「せっかくだから、キキのすきだったものを
いれてあげようかしら。
母さんは、これをいれてあげようと思うけど、
いいかしら? キキ、さむがりだったから」

 母さんはそういうと、マフラーとパッチワークを、
大きな箱の中にしいた。

二つとも、母さんが夏の間かかって作り上げたやつだ。
パッチワークは、今度の展覧会に出す予定だって言ってた。
とても大事にしてるって言ってた。

母さんもキキが死んじゃって、すごくさみしいんだ。
ぼくはなみだが出そうになった。

「わしは、これをキキにあげようかな」

おじいちゃんは、白いきくの花をたばにして、
大きなはこの中に入れてくれた。
大きなはこの中が、きくの花でいっぱいになった。

おじいちゃんが、ずっとだいじに育てていて、
もうすぐさくやつばかりだった。

とてもきれいだから、ぼくとおねえちゃんが
さわろうとしたら、すごくおこられたことがある。

「おじいちゃん、いいの? だいじなきくの花を
切っちゃって」

「残念だけど、いいんだよ。また来年さくのを
まてばいいさ」
そう言うと、おじいちゃんはさみしそうにわらった。

「じゃあ、キキをつれてくるね」

おねえちゃんは、そういうと、おうちの中にもどった。
しばらくして、キキをかかえて庭にもどってきた。

おねえちゃんにだっこされたキキは、
やっぱりねてるみたいだった。
少しだけせなかを丸くして、わらった顔をしてる。

でも、いつもみたいに、
おねえちゃんのかたによじのぼったり、
あくびをしたりはしなかった。

キキは、本当に死んじゃったんだ。

おねえちゃんは、父さんが作ってくれた
大きなはこの中に、キキをそっとねかせた。

リビングのベットでねてる時といっしょだった。
やっぱりキキが死んじゃったなんて、うそだよ。

ねてるだけじゃないか。キキは死んでなんかいないよ。
キキは死なない。
そう思ったら、なみだがあふれてとまらなくなった。

「さとし、キキとさよならしなきゃ。
プレゼントしたいものがあったら、早くキキにあげて」

おねえちゃんは、ぜんぜんないてなんかいなかった。

「いやだよ……」

がまんしてもがまんしても、なみだがあふれてきて
止まらなかった。
ぼくは、両手を強くにぎって、
なみだがあふれるのをがまんした。

「さとし、わがままいわないで」

おねえちゃんはそう言うと、右手にもっていた
スーパーボールを、とりあげた。
キキが大すきだったやつだ。

おねえちゃんは、スーパーボールを、
箱の中でねているキキのそばにおいた。

「じゃあ、さよならだね」
そう言うと、おねえちゃんは、キキがねている
大きなはこに、ふたをしようとした。

ぼくはたまらなくなって、大きな声でさけんだ。

「おねえちゃんは、ざんこくだ。
キキが死んでもさみしくないの? 

父さんも母さんも、おじいちゃんもないてるのに、
おねえちゃんはどうしてそんなにつめたいの?」

「さとし、いいかげんにしろ」
父さんにぶたれた。右のほっぺたが熱くなってきて、
よけいに悲しくなった。

「おねえちゃんも父さんも大きらいだ。
母さんも、おじいちゃんも、みんなざんこくだ」

ぼくは、庭を出て、おうちの外へむかって走った。
ゆうやけの色がなみだでぼやけて見えた。

気がついたら、ぼくは、川の土手にいた。
なみだがようやく止まって、
あたりのけしきがはっきり見えるようになったら、
ゆうやけが少しだけ、きれいに見えた。

土手のむこうに、お日さまがしずんでいく。

ぼくは、土手にすわって、ぼんやりとしずんでいく
お日さまをながめていた。

「おねえちゃんに、ひどいことを言っちゃったな」

本当は、おねえちゃんも、キキが死んで
さみしかったんだと思う。

でも、どうしておねえちゃんはなかなかったんだろう。
父さんも母さんも、おじいちゃんもないてたのに。

おうちに帰りたかった。
でも、どうしていいのかわからなかった。

ぼんやりしているうちに、お日さまは、
どんどんしずんでいく。
そのうち、あたりが、だんだんくらくなってきた。

「どうしよう……おうちに帰りたいけど」
そう思ってた時だった。

「やっぱり、ここにおったのか」
おじいちゃんの声だった。

「おじいちゃん。どうして?」

「なんで、ここにいるのか分かったかって? 
それはないしょだ。となりにすわってもいいか?」
「うん」

ぼくがそう言うと、おじいちゃんは、
ぼくのとなりにすわった。

おじいちゃんは、ポケットからたばこを取り出して、
火をつけた。

「母さんが、たばこすっちゃだめだって言ってたよ。
体によくないからって」
「はっはっは、そうだったそうだった」

おじいちゃんは、そう言うとたばこの火を消して、
ポケットのはいざらにしまった。

「それよりも教えてよ。どうしてぼくが
ここにいるのが分かったの?」

「おねえちゃんから聞いたのさ。
ここでキキをひろったんだってな」

そうだった。自分でもわすれてた。

ここで、おねえちゃんといっしょに、
まだ子ねこだったキキをひろったんだった。

「おねえちゃんが、たぶんここにいるだろうって言ってた。
みんなまってるぞ。おうちに帰らないか?」

 おじいちゃんは、そう言うと、
ぼくの頭をなでてくれた。

「おねえちゃん、おこってないかな」

「おこってたら、さとしが、ここにいることなんて
教えてくれないさ。すごく心配してたぞ」
「そうなの?」
「ああ」

おじいちゃんは、そう言うと、
もう一度たばこを取り出して、火をつけた。
ほんの少しだけあたりが明るくなった。

「おじいちゃん、聞いてもいい?」
「なにかな?」

「おねえちゃん、どうしてなかなかったんだろう? 
あんなにキキをかわいがってたのに。
さみしくないのかな。悲しくないのかな」

 ぼくは、足もとに落ちてる小石をひろってなげた。
くらくなった川に、小石が落ちる音がした。

「さみしいし、悲しいにきまってるさ。

たぶん、さとしと同じくらいにね。
おぼえとるか? お前がおねえちゃんといっしょに、
キキをおうちにつれてきた日のことを」

 キキを、この土手でひろって、
おうちにつれて帰った日のことを思い出した。
母さんは、動物をかうのはいやだっていつもいってた。
だから、きっとキキは、おうちにおいてもらえない。

おねえちゃんは、制服のうちがわにキキをかくして、
おうちにつれて帰った。

母さんがそれを見つけて、けんかになった。
でも、おねえちゃんは、母さんと父さんに、
なんどもなんども、キキの世話を
ぼくといっしょにするってやくそくして、
キキをおいてもらえることになったんだ。

キキが、おうちにおいてもらえるようになったのは、
おねえちゃんのおかげだった。

「さすがの母さんも、おねえちゃんには
勝てなかったなあ。さとしもえらかった。

おねえちゃんと交代で、一日も休まないで、
キキの世話をしたもんなあ」

「だから、すごくさみしいんだ。
はずかしいけど、なみだがいっぱい出た」

ぼくは、ないたのが急にはずかしくなって、
足元の小石をもう一度川へ向かってなげた。

「さとし、悲しくてなくのは、はずかしいことじゃない。
じいちゃんだって、母さんだって、父さんだって、
悲しくてないたじゃないか」

「おねえちゃんは、どうしてなかなかったの? 
ぼくより強いから?」
「それはわからないなあ」

おじいちゃんは、そう言うと、もう一度たばこをすった。
ほたるみたいな赤い光が、ぼくのとなりで光った。

「でもな、おねえちゃんは、前にすごく
ないたことがあるぞ。わんわん声をあげてないた」
「ほんと? いついつ?」

「おばあちゃんが死んだ時だよ」

「おばあちゃん?」

「ああ、そうか、さとしはおぼえてないだろうな。
さとしがまだ赤ちゃんだったころ、
うちはね、おばあちゃんがいっしょに住んでたんだ。

おぶつだんに、しゃしんがかざってあるだろ? 
あれが、さとしのおばあちゃんだ。
そのおばあちゃんが死んだ時、
おねえちゃんはないたよ。わんわんないた」

「おじいちゃんは?」

「そりゃないたさ。父さんも母さんも、
おじいちゃんもないた。すごくすごく悲しかったよ」

そう言うと、おじいちゃんは、またたばこをすった。

「でもね、おねえちゃんはえらかった。
いつまでもないてたら、おばあちゃんがさみしがるって
いってね、おそうしきが終わった次の日からは、
なかなかったよ。

おじいちゃんも父さんも母さんもすごくおどろいたなあ。
きっとキキが死んで、おねえちゃんは、
さとしと同じくらい悲しいんじゃないかな。

でも、ないたら、キキがさみしがると思って、
なくのをがまんしてるんじゃないかな」

「どうしてがまんできるんだろう? 
もうキキとあそべなくなったのに。
死んじゃうってそういうことなんでしょう。

父さんも言ってたよ。テレビゲームのソフトみたいに、
まほうつかいが生きかえらせたりできないって。
もう二度とあそべないんだって」

「そうだな、たしかにキキと遊ぶことはできなくなったね。
でもね、さとし、お前はキキがいなくなってしまったと
思うかい?」

「キキが?」

「ああ、さとしはどう思う? キキともう、
あそべなくなってしまったけど、
キキは本当にいなくなってしまったと思うかい?」

「よくわからないよ。でも……
なんだかよくわからないけど、
キキとまたあそべる日がやってくるような気がする」

「そうか、そうか」

そう言うと、おじいちゃんは、
ぼくの頭をなでてくれた。

「キキと、あそんだりすることはできなくなった。
でも、また会えるような気がするだろう? 

それはね、キキがお前の心の中に
いてくれるからなんだ。

お前がキキのことを忘れたりしなければ、
キキはずっとお前のそばにいてくれる。
おじいちゃんはそう思うよ」

「わすれたりなんかしないよ。

ずっと。これから大きくなって、
父さんみたいにおとなになっても、
おじいちゃんになっても、キキのことはわすれない」

「そうだな。でもね、これからさとしが大きくなると、
もっともっといろんなわすれられない大事なことが、
たくさんたくさんふえてくる。

そうすると、キキのことを、わすれてしまいそうに
なってしまう。

それが本当にキキが死んでしまうことだと思うんだ。
もし、お前がキキのことをわすれてしまったら、
いっしょにあそべなくなっただけじゃなくて、
どこにもいられなくなってしまうだろ。

そうならないように……キキがいつまでも、
お前の心の中にいてくれるようにしないか」

「おそうしきをするってこと?」

「ああ、やっぱりさみしいけどね。ないてもいいさ。
なみだも流してもいい。
その分きっと、キキはお前の心の中に
いつまでもいてくれると思うよ」

「そうだね。それに、おねえちゃんにもあやまりたい」
「よし、じゃあ、おうちに帰ろうか」
「うん」

「すっかり、まっくらになったな。
母さんにおこられるかもしらんな」

 おじいちゃんは、そう言ってぼくの手をひっぱると、
土手をおりた。

「ねえ、おじいちゃん?」
「なんだい?」
「おばあちゃんのことおぼえてる?」

「どしたい? やぶからぼうに」

「だって、さっき言ってたじゃない。
死んじゃっても悲しんだぶん、ずっと心の中に
キキがいてくれるようになるって。
おじいちゃんの心の中には、おばあちゃんがいるの?」

「ああ、いるよ。
おばあちゃんは死んでしまったけど、
おじいちゃんの心の中には、
今もおばあちゃんが生きている。

こうやって目をとじると、いつでも会えるよ。
おばあちゃんが生きている時のわらった顔まで、
はっきり思い出せるぞ」

「ぼくも、キキのこと思いだせるよ。
スーパーボールを投げてあげるとね、
よろこんでジャンプして飛びつくんだ」
「そうか、そうか」

おじいちゃんは、ぼくの頭をなでてくれた。

「キキは、ずっとお前の心の中にいてくれるよ。
それからな、一つだけ、
おじいちゃんからお願いがあるんだ」
「なあに?」

 ぼくが、見上げると、おじいちゃんは
少し悲しそうな顔をしてた。

「おばあちゃんが死んじゃった話をしただろう? 
そして今日、キキが死んだ。

残念だけど、おじいちゃんも、いつかキキのように、
死んでしまう日がやってくる」
「やだよ、そんなの」

 ぼくがそう言うと、おじいちゃんはわらった。

「もちろん、今すぐにじゃないさ。
じいちゃんは、まだまだ元気で生きるつもりだからな。

でもね、必ず、キキみたいに、死んでしまう日が
やってくる。

そうだなあ……たぶん、さとしがおとなになるころに、
そうなるんじゃないかな。

もしそうなったら、キキと同じように、
さとしの心の中に、おじいちゃんをおいてくれないかな
おじいちゃん、死んじゃっても、
さとしとずっといっしょにいたいんだ」

「その時はないてもいい?」

「ああ、ないてもいいさ。男の子だって、
悲しい時はうんとないてかまわない。

その代わり、キキといっしょに、さとしの心の中に、
いつまでも、おじいちゃんを、
おいてくれるとうれしいな」

「うん、悲しいけど、やくそくするよ」

「ありがとう。キキは死んでしまったけど、
いなくなったわけじゃない。
さとしの心の中にずっといてくれるよ」

「ありがとう、おじいちゃん」

ほんの少しだけ、さみしくなくなった。
おじいちゃんのいうように、
もうあそんだりできないけど、
キキは、ぼくとずっといっしょにいてくれると思う。

「おねえちゃん」
「さとし、帰ってきたの?」

おじいちゃんといっしょに、おうちの門をくぐったら、
おねえちゃんは、ひとりで庭にいた。
キキがねている大きなはこは、そのままだった。

「キキ、そのままにしておいてくれたの?」

「うん、さとしにもきちんと、
さよならしてほしかったから」

 おねえちゃんといっしょに、しゃがんで
大きなはこの中を見た。

おじいちゃんの白いきくの花と、
母さんのマフラーにくるまれて、
キキはねてるみたいだった。

あいかわらず、キキはわらった顔をしてた。

「キキ、死んじゃったんだね」
「うん」

 おねえちゃんが、キキの顔をそっとなでた。

「ごめんね、おねえちゃん……
 さっきはひどいことを言って」
「いいのよ」

 おねえちゃんは、ぼくの方をむかずに、
キキの顔をなでていた。

「おじいちゃんから聞いたよ。
なんでおねえちゃんがなかないか」
「おじいちゃん、なんていってた?」

 おねえちゃんは、キキをなでるのをやめて、
ぼくの顔を見た。

「ごめんね、本当は、ぼくとおなじくらい
悲しかったんだね。
でも、ないたら、キキが悲しむと思って、
なくのをがまんしたんでしょ?」

 おねえちゃんは、たちまちくしゃくしゃな顔になった。
今にもなきそうだった。

「おじいちゃんが言ってたよ。
悲しい時は、いっぱいいっぱい、ないていいんだって。
そしたら、キキのことを
わすれなくなるんだって」

 ぼくがそういうと、おねえちゃんは
声をあげてなきだした。

ぼくも悲しくなってないた。
ぼくと、おねえちゃんのなみだが、たくさんこぼれて、
キキの顔に落ちた。

キキは、わらったまま、
ないてるみたいな顔になった。

それから、もういちど、みんなで
キキのおそうしきをした。

ぼくは、土手でとってきた、
ねこじゃらしをいれてあげた。

おねえちゃんと半分ずつ、たくさんたくさん、
大きなはこの中にいれてあげた。

おじいちゃんの、白いきくの花に、
ねこじゃらしがまざって、
キキは花たばにかこまれているみたいだった。

それから、父さんとおじいちゃんが、
キキのねてる大きなはこを、
さくらの木の下にはこんでくれた。

「じゃあ、さよならになるな」

キキがねてる大きなはこを、
さくらの木の下にうめる時に、父さんが言った。

さよならじゃないよ。

キキはぼくの心の中にずっといてくれるんだ。
おねえちゃんも同じ気持ちみたいだった。
少しだけ目が赤かったけど、もうないてなかった。

キキは死なない。
もうあそべなくなったけど、
ずっとぼくといっしょにいるんだ。
悲しかったけど、もうなみだは出なかった。

 

[PR]10日間無利息
☆★ユアーズ☆★

こんばんは

ミュールとサンダルの違いが分からなくて
女性誌の連載を取り逃がしたライター松沢です。

ええ、ええ、ファッションには縁がない男なんでさ。
いいんだよお、どうせ連載もらっても、
5週ぐらいで打ち切りになるのが目に見えてるし、
チキショー(小梅太夫風に)


どうでもいいけど、ミュール=サンダルじゃね?

ミュール(mule)って、仏語でいうサンダルのことじゃね?

要は「つっかけ」で、あっちでは、
おなご用のファッショナブルなやつも、
野郎用のごついのまで、
み~んなまとめてミュールって
呼んでると思うが?

そういえば、芥川賞作家・玄侑 宗久氏の作品
「祝福」の中でも、ヒロインとの出会いのシーンで
ミュールを描写したシーンが出てくるね

どこにでもあるような、春の一日に
一生を通じて触れ合っていく
運命の女性と出会うシーンがさりげなく、かつ
生き生きとした形で描写されている

1pごとに交互に編集してある、この物語の
キーワードである蓮の花の写真も素晴らしかったな

  

さてさて、てなわけで、ファッション辞典なるものを
調べてみました。
ふむふむ、で?

「サンダルとミュールは違い、
バックベルトやネックベルトのあるものがサンダル。
ベルトのないものがミュール」

そうかあ? 日本にありがちな
外来語の変化なんでしょうな。
もともとミュールって、靴の上にはいた、
泥除けの下駄みたいなものだったみたいだしね。

ふむふむ。仕事はボツになったけど、
こうしてみると、食とかファッション(ひいては藝術)って、
日本とフランスはずいぶん接点があるんですなあ。

ゴッホが浮世絵のコレクターだったことは
よく知られてるし、
16世紀のフランス製の楽器とかを見てみると、
蒔絵で装飾されたものとかがあったりする。

フランスのコース料理なんてのも、
もともと茶道の懐石料理の影響を
受けているといわれているし

19世紀には、日本料理の影響を受けて、
レモンも塩もかけない魚の切り身(刺し身だね)を
出してる店があった。

ヌーベルキュイジーヌ
(70年代から起きた、
栄養過多などによる生活習慣病を
防ぐための、
生クリームやバターを控えた新しいフランス料理)も、
日本の懐石料理が
強く意識されているといわれています。

これがまた、日本に逆輸入されて、
日本人のフランス料理のイメージとして
浸透しているといわれてますね。

とはいえ、いくらおしゃれや食にこだわる国でも、
そんなかしこまったものばかり食べてるわけじゃない。

日本人だって、毎日懐石料理や
鮨ばっか食べてるわけじゃないように、
家庭料理というものも存在します。

意外なことに、「ネギ」とか、
およそフランス料理の食材では
想像できないものを使った料理も多かったりして
驚きますが、
代表的なものは、煮込み料理と卵料理でしょう。

最近では、ラタトゥュ(野菜の煮込み)
ポトフ(pot au feu ・火にかけた鍋・まんまですがな)
などといった煮込み料理が
よく知られるようになりましたが、
ふだんはみんな、あんな感じの素朴なものを食べてます。

あとはチキンや卵料理だけど、
ポピュラーなものといえば オムレツ。

今でこそ、世界中でふつうに作られてますが、
もともとオムレツってフランス料理なんですな。

なんでも、おなかをすかした王様が
(ルイさんあたりでしょうか)
民家に立ち寄って、なんでもいいから
食べさせてくれと注文したら、
あっという間にオムレツが出てきたらしい

王様もあまりの速さに驚いて
「ケル オム レット!(めっちゃはやっ!)」
といったことから、この名前がついたとか。

実際、外がしっかり焼けてて、
中がとろとろのオムレツを焼くのは、

大体40秒前後で焼き上げるのがふつうですので、
王様が驚いたのも不思議はないのかもね。

上手にオムレツを焼くのって、かなり難しくて、
コンスタントに同じ形のものを焼くには、
熟練した技術がいります。

加えて、熟練した料理人は、
専用のフライパンを用意します。

新品の鉄製のフライパンをおろして、
一度たわしでよくあらい、
強火でかんかんに焼いた後、
油を塗ってさましては強火で焼く。

これを最低2週間はやらないと、
きめの細かいオムレツは焼けないと言われてます。

当然、使い込んで油がしっかりしみたフライパンほど、
使い勝手がよくて、
ほんとにびっくりするようなものが焼けます。

出入りしてる料理スタジオにあるフライパンを、
現在調教(?)してるのですが、楽しみですな。

暇があると、オムレツを焼いてますが、
プレーンだけじゃなくて、最近お気に入りなのが、
鮭をほぐしてまぜこんだオムレツ

卵をあわ立て器でよくほぐして、
シノワ(じょうご型をした裏ごし器みたいなものです)で
裏ごしして、生クリームと、ほぐした鮭を混ぜ込んで焼くと、
混ぜ込まれた鮭が、ほんのりピンク色に見えて、とてもきれい。

材料費かからないし、もうちょっといじると
おもてなし料理になりそうなので、
レシピを改良ちうの日々です。

話かわるけど、年齢問わず女性の方って、
オムレツとかオムライス好きな人多いよねえ。

この前も、取引先のおぜうさん(4歳)と
おデート(日本語で子守という)した時に、
オムレツの話をしたら、
「作って作って」とえらくだだこねられました。

知り合いの女の人の中でも、
オムレツとかオムライス嫌いって人は
あんまり聞かないけど、
何か秘密があるのかしらん?

いずれにせよ、女心とファッション雑誌は、
あっしにとって永遠の謎でござります。

あ、また、ファッション雑誌の
連載流れたの思い出しちゃった……

チクショー

と、最後に小梅太夫みたく叫んでみる
さ、お仕事お仕事

[PR]10日間無利息
☆★ユアーズ☆★

ニュースチェックは、ほぼ毎日やりますが、
最近驚くことが多いですな。
いやさ、自分の書いてる作品の中で
フィクションとして設定したことが、
現実に起きることですよ。

COLORという作品の中で書いた、
都心のいきなりの大停電

それから、休載してたけど、
まぐまぐでメルマガ流してる「桜の舞う空の下で」
という小説ででてくる、
自衛隊基地から銃器が紛失するという事件。

これね

http://www.mag2.com/m/0000113314.html

ストーリーの概略をば。

大学の工学部に通う「柳井龍之介」の彼女、
「呉美華」は台湾からの留学生。

春期休暇のある日、柳井が大学内で
起こした先輩との喧嘩が、傷害事件に発展したのを
きっかけに、美華は消息を絶ってしまう。

龍之介は、
アルバイト先の同僚、ミュージシャンのタカさんと
一緒に美華の行方を追うが、
どういうわけか身の危険にさらされる
羽目になった挙句、美華を追う手がかりが
全くなくなってしまう。

やむをえず、タカさんの知り合いの天才ハッカー優に、
美華の足取りを探ってもらうと、
龍之介の知らない美華の姿が
次々と浮かび上がってきた。

その後、龍之介とタカさんを追ってきた
公安の刑事・氷室によって
美華が、実は防衛庁や警察庁警備局がマークする
テロリストだったことを知る。

同日、美華は防衛庁や警察庁警備局の
監視の目をかいくぐった後、
地下鉄の乗客に偽装し、

都内に潜伏していたテロリスト集団を率いて
複数の民間人を盾に、
首相官邸、国会議事堂、政府機関の立ち並ぶ駅
国会議事堂前駅を占拠する行動に出た。

テロリストのキーマンは、ネットにストリーミング映像を流し
自分たちが警視庁SATなどの凶悪犯鎮圧部隊より
はるかに戦闘能力を超えるという声明を出した。

その声明を無視し、駅構内に突入した
警視庁の機動隊員が射殺されたことで、
マスコミをはじめ、警察組織、政府組織は
突如降りかかってきた危機に震撼する。

それに追い討ちをかけるようにテロリスト集団は、
首都圏を殲滅できる小型核と生物兵器を保持している
という声明を、ストリーミング映像を使って全世界へ配信した。

政府や警察組織が手をこまねいている中、
美華の恋人である龍之介は、天才ハッカー優を指令塔に、
命令を無視して警察庁警備局から追われることになった刑事
の氷室、そして美華の入国の際に携わった元活動家の弁護士
吉村とともに、
国会議事堂前駅を占拠している美華を奪還にむかう。

以上が梗概

(まだ連載中なので、ぼかしいれた形でしか書けなんだ
すいませぬ)

で、その中でさ、外交官パスポートを持ってて、
東京・赤坂のアメリカ大使館に出入りする在日アメリカ軍の要人が、
美華とともに、陸上自衛隊練馬駐屯地から
89式自動小銃と、対市街戦用特殊迷彩服を盗み出す
シーンが出てくるんだけど、

まさか本当に銃火器が紛失するような事件が
起きるとは思わなんだ。

自衛隊の武器や銃火器は、
弾丸一発まで防衛庁のシステムに記録されて
厳重に管理されてるはずだけど、
実際に武器を保管している保管庫の状態まで
リアルタイムに把握してるとは限らない。

何者かが帳簿上、数をそろえて
盗み出すことも不可能ではないとも考えられる。

その脆弱性に気づいたテロリストが
自衛隊員を抱き込んで
武器を盗み出すという展開にしたのですが、

(もちろんフィクションだけどね。取材不足だったので、
このあたりはさらさらと書いてぼかしてるのだけど、
実際にはこんなことは、まずありえないはず)
うーむ……

今回紛失したのは、別の型式の自動小銃らしいけど、
もともと、自衛隊に配備されてる自動小銃って、
警察官が持つような拳銃なんかとは比べ物にならない
貫通力があるはず。
人が撃たれたら、それこそ一発で絶命しかねない。

紛失したのは銃だけで、実弾は装填されて
なかったらしいから、
このまま事態が収束してほしいね

ちなみに僕が書いてるストーリーは、
テロリスト集団が、陸上自衛隊の自動小銃に加えて、
外交官パスポートを持っていた米軍のキーマンを通じて
テロリスト集団が、米海軍横須賀基地が秘密裏に隠し持っていた
小型核と生物兵器を強奪する流れになってたりする。
(もちろん、フィクションです。念のため)

日本は当然、国際社会へのスタンスとして
国内に核を持ち込まないという大前提がある。

おまけに、国際法に違反しかねない生物兵器を
米海軍が日本に持ち込んでいたという証拠資料を
国際社会にネット上で発信することをちらつかせて
テロリストが、日米両政府を相手に
巧みに交渉するという感じ。

(もちろん、大どんでん返しのラストが待っているのだけど、
 それは最後のお楽しみということで)

しかしまあ、フィクションのつもりで書いたことが
こんなに現実に近づいてくるとはね。
何もなく収束してほしいなあ

この作品を連載しはじめたころって、
2年前だから
米海軍横須賀基地に
イージス艦や原子力空母が入港することが
決定するはるか前のことだったんだけど、
なんだか
奇妙なくらいリアルなストーリーになってきました。

もっともこういうったことは、小説の中だけで
実際は
おだやかな毎日が続いてくれることを
祈っていますけどね



忍者ブログ [PR]
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
松沢直樹
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1968/03/03
職業:
著述業
趣味:
冬眠
自己紹介:
沈没寸前のコピーライター ライターです。ヤフーではなぜか「小説家」のカテゴリにHPが登録されてますが、ぢっと手を見る日々が続いております。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
アクセス解析