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作家 松沢直樹のブログ
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☆★ユアーズ☆★

ニュースチェックは、ほぼ毎日やりますが、
最近驚くことが多いですな。
いやさ、自分の書いてる作品の中で
フィクションとして設定したことが、
現実に起きることですよ。

COLORという作品の中で書いた、
都心のいきなりの大停電

それから、休載してたけど、
まぐまぐでメルマガ流してる「桜の舞う空の下で」
という小説ででてくる、
自衛隊基地から銃器が紛失するという事件。

これね

http://www.mag2.com/m/0000113314.html

ストーリーの概略をば。

大学の工学部に通う「柳井龍之介」の彼女、
「呉美華」は台湾からの留学生。

春期休暇のある日、柳井が大学内で
起こした先輩との喧嘩が、傷害事件に発展したのを
きっかけに、美華は消息を絶ってしまう。

龍之介は、
アルバイト先の同僚、ミュージシャンのタカさんと
一緒に美華の行方を追うが、
どういうわけか身の危険にさらされる
羽目になった挙句、美華を追う手がかりが
全くなくなってしまう。

やむをえず、タカさんの知り合いの天才ハッカー優に、
美華の足取りを探ってもらうと、
龍之介の知らない美華の姿が
次々と浮かび上がってきた。

その後、龍之介とタカさんを追ってきた
公安の刑事・氷室によって
美華が、実は防衛庁や警察庁警備局がマークする
テロリストだったことを知る。

同日、美華は防衛庁や警察庁警備局の
監視の目をかいくぐった後、
地下鉄の乗客に偽装し、

都内に潜伏していたテロリスト集団を率いて
複数の民間人を盾に、
首相官邸、国会議事堂、政府機関の立ち並ぶ駅
国会議事堂前駅を占拠する行動に出た。

テロリストのキーマンは、ネットにストリーミング映像を流し
自分たちが警視庁SATなどの凶悪犯鎮圧部隊より
はるかに戦闘能力を超えるという声明を出した。

その声明を無視し、駅構内に突入した
警視庁の機動隊員が射殺されたことで、
マスコミをはじめ、警察組織、政府組織は
突如降りかかってきた危機に震撼する。

それに追い討ちをかけるようにテロリスト集団は、
首都圏を殲滅できる小型核と生物兵器を保持している
という声明を、ストリーミング映像を使って全世界へ配信した。

政府や警察組織が手をこまねいている中、
美華の恋人である龍之介は、天才ハッカー優を指令塔に、
命令を無視して警察庁警備局から追われることになった刑事
の氷室、そして美華の入国の際に携わった元活動家の弁護士
吉村とともに、
国会議事堂前駅を占拠している美華を奪還にむかう。

以上が梗概

(まだ連載中なので、ぼかしいれた形でしか書けなんだ
すいませぬ)

で、その中でさ、外交官パスポートを持ってて、
東京・赤坂のアメリカ大使館に出入りする在日アメリカ軍の要人が、
美華とともに、陸上自衛隊練馬駐屯地から
89式自動小銃と、対市街戦用特殊迷彩服を盗み出す
シーンが出てくるんだけど、

まさか本当に銃火器が紛失するような事件が
起きるとは思わなんだ。

自衛隊の武器や銃火器は、
弾丸一発まで防衛庁のシステムに記録されて
厳重に管理されてるはずだけど、
実際に武器を保管している保管庫の状態まで
リアルタイムに把握してるとは限らない。

何者かが帳簿上、数をそろえて
盗み出すことも不可能ではないとも考えられる。

その脆弱性に気づいたテロリストが
自衛隊員を抱き込んで
武器を盗み出すという展開にしたのですが、

(もちろんフィクションだけどね。取材不足だったので、
このあたりはさらさらと書いてぼかしてるのだけど、
実際にはこんなことは、まずありえないはず)
うーむ……

今回紛失したのは、別の型式の自動小銃らしいけど、
もともと、自衛隊に配備されてる自動小銃って、
警察官が持つような拳銃なんかとは比べ物にならない
貫通力があるはず。
人が撃たれたら、それこそ一発で絶命しかねない。

紛失したのは銃だけで、実弾は装填されて
なかったらしいから、
このまま事態が収束してほしいね

ちなみに僕が書いてるストーリーは、
テロリスト集団が、陸上自衛隊の自動小銃に加えて、
外交官パスポートを持っていた米軍のキーマンを通じて
テロリスト集団が、米海軍横須賀基地が秘密裏に隠し持っていた
小型核と生物兵器を強奪する流れになってたりする。
(もちろん、フィクションです。念のため)

日本は当然、国際社会へのスタンスとして
国内に核を持ち込まないという大前提がある。

おまけに、国際法に違反しかねない生物兵器を
米海軍が日本に持ち込んでいたという証拠資料を
国際社会にネット上で発信することをちらつかせて
テロリストが、日米両政府を相手に
巧みに交渉するという感じ。

(もちろん、大どんでん返しのラストが待っているのだけど、
 それは最後のお楽しみということで)

しかしまあ、フィクションのつもりで書いたことが
こんなに現実に近づいてくるとはね。
何もなく収束してほしいなあ

この作品を連載しはじめたころって、
2年前だから
米海軍横須賀基地に
イージス艦や原子力空母が入港することが
決定するはるか前のことだったんだけど、
なんだか
奇妙なくらいリアルなストーリーになってきました。

もっともこういうったことは、小説の中だけで
実際は
おだやかな毎日が続いてくれることを
祈っていますけどね

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☆★ユアーズ☆★

さてさて、複数のアーティストさんと
コラボ企画として進めていました
連載小説COLORですが、
第二章が無事公開と相成りました。

第二章トップページ

まだ読んだことないという方は
第一章からぜひぜひ

第一章トップページ

いずれも音が出ますので、
ご注意くださいね
(職場なんかで読んでると顰蹙ものですぞ)

去る8月21日は、ヤフージャパンの
オンライン作品のカテゴリに登録されるわ
300万ヒットを記録するわで
なんだかすごい状態になってる
プレッシャーもあってか
第二章の製作も大変でした。

フラッシュや音楽コンテンツとの
シンクロを考えないといけないし
横書きの日本語になるので、どうしても
読みづらくなってしまうから
相当原稿を削ることになりました。

書き手としては、このあたりにジレンマを
感じますが、今後の課題ですね。

せっかくですから、ハイライトシーンをちらっと

僕の二度目のサヨナラの言葉だった。
気まずくて、残ったコーヒーをすすった。
顔を上げると、しばらく沈黙が続き、
麻美と僕の視線が重なった。

「賢一も京介も変わったよね」

「何が?」

「お金のためなら、周りの人を叩き落しても
成り上がる事を、正義だと思うようになったでしょう」

「正義だなんて、思ってない。
ただ金が必要なだけなんだ」

「それが嫌いなのよ。お金のためなら、
何でもやるってことじゃない」

「僕の会社は、1000人近い人間がいる。
そのほとんどが、ニートだったり、
僕たちみたいなギャングだった、社会不適応な子だ。

実際、ほとんどの子が、入社した後、
一度も会社に出てきていない。
ネット経由で仕事をしていて、
ふだんはどんな生活を送っているかもわからない。

ただ、彼らは僕の会社の社員には違いないんだ。
引きこもりに近い状態でも仕事を続けることで、
金をもらって、生活を支えている。

中には、両親が職を失って、
引きこもりを続けられない絶対絶命な状態な中で、
両親を養いながら、今の生活を維持している子もいる。

みんな何かをつかもうと必死になってるんだ。
彼らを支えるために、僕は金を稼がないといけないんだ」

「自分を正当化することまで覚えたのね」

麻美は、切りつけるような視線をぶつけてきた。

「僕も迷ってるよ。本当にこれでいいのか分からない。
ただ一つだけはっきり言えることがある。
たぶん彼らは意識してないだろうけど、
ネット経由で仕事をすることで、何かをつかみはじめている。
社会に貢献しているという意識が、
彼らに誇りを持たせていると思うんだ。

実際、僕の会社は、何もしなくても基本給だけは出すから、
引きこもりたいだけなら、給料泥棒を決め込めるわけだしね。
生憎、そういう子は一人もいない。

ほとんどの子は、企画を持ち込んできたり、
プログラムを納品してる。
僕は、彼らの努力を無駄にするわけにはいかない。
だから、金を稼ぐんだ」

「ただの言い訳よ、そんなの。
引きこもりの子のスキルを買い叩いてるだけじゃない」
麻美は、鋭い視線を僕にまた投げた。

続きは、サイトでお楽しみくださいませ。ではでは

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☆★ユアーズ☆★

今春、電子書籍という形で刊行させていただいた
原爆をテーマにした児童向け小説
「ぼくたちの空とポポの木」が、点字の本になりました。

有志のみなさまが、点字に翻訳してくださったのですけど、
有難い限りです。

今回電子書籍で、この作品を刊行させていただいたのですけど
そもそも、刊行の時点で
電子書籍のブックリーダーソフト「T-time」を
開発してるボイジャーって会社さんが、
視覚障害者の方も楽しんで読書できる工夫を、
ブックリーダーソフトに盛り込んでくださってるんですね。

文字を拡大したりするルーペ機能とか、
自動的に音声読み上げをしてくれる機能を
付加してくださっていて、
これがまたとても素晴らしい出来栄え。

実際、僕もメルマガとかで実験的に
自分の作品を配信してたりした時に、
視覚障害者の方から、メールをもらうことがよくあった。

お金を払って、作家さんの最新の本を読もうと思っても、
点字の本や、オーディオブック(朗読した本)がないので、
読書が楽しめないのだそうだ。

今でも、メルマガで「桜の舞う空の下で」という
ミステリ小説を配信してるんだけど、
150名ほどの読者の中にも、音声読み上げソフトを使って、
僕の小説を鑑賞してくださってる視覚障害の方がいらっしゃる。

ご不便をかけてるのは心苦しいし、なによりみなさんが
楽しんで読書していただける環境があれば……と思っていたので
ボイジャー社の電子ブックリーダー「T-time」の機能追加は
共感できるし、頼もしいと思っています。

今回出させていただいた
「ぼくたちの空とポポの木」という作品は、
原爆をテーマに扱った、社会性の高いテーマの作品なので、
電子ブックリーダーに音声読み上げの機能がついたのは、
とてもありがたいと思っています。

ただ、中には、視覚障害と聴覚障害の両者と付き合いながら、
点字の本で、読書を楽しんでいらっしゃる方もいます。

もちろん、視覚障害のある方の中には、
音声読み上げの機能に頼るよりも、
読みなれた点字の本の方がいいと
おっしゃる方もいらっしゃる。

そんなわけで、より多くの方に読んでいただけるために、
埼玉にお住まいの有志の方から点訳を申し出て
いただいたのですが、有難い限りです。

読者様の中には、他の方に勧めてくださったり
ブログにコメントやトラックバックを張ってくださる方も
増えてきました。

こうやって、共感して下さった方が、
お力を貸してくださったおかげで、
いろいろな人の心に作品が旅していくのを見るのは
すごくうれしいです。

先日、NBC・長崎放送の記者だった伊藤さんって方が、
1971年から全国を回って、
広島や長崎で実際に被爆した方の証言を
記録した音声ファイルを公開していらっしゃる
HPをネットでみつけた。

あつかましくも、リンクをはらせていただくことを
お願いさせていただいたのだけれど、快諾してくださって
僕の個人サイトにリンクを張ってくださった。

ヒロシマ・ナガサキ わたしたちは忘れない

そのおかげで、またこの作品は、
多くの方のところへ旅することができるようです。

この作品って、史実を元にしたフィクションにしたんだけど、
執筆の際にずいぶん悩んだ。

歴史的史実に基づいた作品にすべきなのだろうけど、
ノンフィクションという形で書いたら、

あまりにも凄惨すぎて、
この問題を客観的に考えることが
できなくなるんじゃないかなあ…とかさ。

特に児童向けの作品だから、
偏った考えかたを植えつけたくはなかったしね。

だから、取材したり、実際僕が記憶していることの中で、
書かずにカットしてしまわなければいけないことが
山ほどでてきてしまった。

そのことを盛り込むべきだったかなあ…とか、
実は今でも悩んでたりしてます。

僕は、戦争が終わって23年経って
生まれたのだけれど(昭和の男でござんす)、
僕が高校を出るくらいまでのころは、

やはり戦争や原爆の残した
爪あとがそこかしこに残っていた。

ここでは詳しく書かないけど、
そのことは、やはり忘れられない。

僕が生まれる23年も前に終わっていた戦争は、
違った形で、
きな臭い憎悪を吐き出し続けていたんだよね。

残念だけど、今でも全ての人が、
過去の戦争と決別できたわけじゃない。
今も、61年前に終わった戦争が残したものに
苦しんでいらっしゃる方もいる。

そして、平和で裕福な暮らしをしている
この国の外では、
日本が61年前に経験したことと
全く同じような凄惨な状態に見舞われている国が
たくさんある。

この作品を読んでくれているお子さんと同い年くらいで
南米や、アフリカに住むお子さんの中には
本やおもちゃやお菓子を与えてもらう前に

銃を持って、人を撃つことを教えられているお子さんが
30万人以上もいる。

やるせない話だよね

そして、僕たちが住む日本も
そんな不安定な世界の中で、毎日を過ごしていて、
いつまたそんな危機を迎えるか分からない状態にある。

そんな矛盾を解決する方法を、
この作品を読んでくださった世界中の方
一人一人が、
考えてくださるきっかけになって

いつか本当に
戦争という危機がこの世界から
無くなる日がくればいいなあ……
とか思ったりしてます。

国際政治のことは、それなりに知識があるし
歴史的な事件を目の当たりにして
取材を重ねてきたから

戦争の危機が
この世界から消える時代を作ることが
とても難しいことだということは
よくわかっています。

とてつもなく無謀な望みのようだけど、なんだかね
いつかきっと叶うような気がするんだよね。

なぜかわからないけど、そうなるといいなあ

一字一字
祈りを込めて書いたこの物語が
世界を変えてくれるきっかけを生む力に
なってくれますように

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☆★ユアーズ☆★

僕がシナリオ作成・小説原稿を書いてるオンライン小説
COLORが、おかげさまで昨日
350万アクセスを突破しました

http://color-story.com/index.html

音が出ます・ご注意を↑

(パソコンからしか見られないので
携帯からご覧いただいてる方ゴメンナサイ!)

ひょええええ!
公開数日で15万アクセスを超えたとは
聞いてましたが、はちゃめちゃに
アクセスのびとりますがな

おまけに、ヤフーのオンライン作品のカテゴリに
登録されたそうです。

http://dir.yahoo.co.jp/Arts/Humanities/Literature/Literary_Fiction/Web_Published_Fiction/

あ、確かに、真ん中くらいに掲載されてますね。
よきかなよきかな

僕の個人サイトも、ヤフーのカテゴリに登録されてるのに、
全然アクセスのびないのはなぜなんだろ?

それはよしとして、
これだけ読んでもらえるとありがたいですな。

他の仕事とやりくりして
2章を書いてますが、なかなかタイトでございます。

時間を管理するのも仕事のうちだから、
頑張らないとね
とにかく、フルガッツでサクサク頑張ります♪

 

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彼は1920年に生まれた

彼が生まれた日、両親は新しい家族の誕生を喜んだ。

幼かった姉たちも、初めての弟の誕生を喜んだ。

 

厳格だった父は、彼を厳しく育てた。

でも、姉たちに囲まれて育った彼は

優しい少年に育った。

たくさんの思い出ができた。

 

6歳の春は、

父に隠れて、姉たちと一緒に白い花の種を蒔いた。

 

7歳の夏は、自分と同じ年に生まれた柴犬が死んで、

父に隠れて一晩中泣いた

 

 

8歳の秋は、父と二人だけで栗拾いにでかけた。
いつもは厳しかった父が、とても優しかったのが不思議だった。
 

9歳の冬は、はじめて学校の成績が一番になって、
父からアメリカの絵本を買ってもらった。

 

少年は、絵本の中に飛行機を見た。

少年は、初めて見る飛行機の姿にすっかり魅了された。

少年は、操縦士になる決心をした。

 

父は、飛行機に夢中になる少年を見て、
男の子らしく成長していく息子に目を細めた。

操縦士になりたいという少年の夢は、どんどん膨らんだ。

 

 

「絵本で見た大きな飛行機の操縦士になって、

お父様とお母様を、遠い国へ旅行に連れていきたいんだ」 

 

夢を膨らませ続ける少年に、父は、
操縦士の養成学校の存在を教えた。
 

勉強に励んだ彼は、17歳の春、
乗員養成所の試験に合格した。 

 

超難関と言われていた逓信省航空局の試験にパスした彼は

一人で米子に移り、難解な勉強と訓練に励んだ。

 

卒業して二等航空士の資格を手にしてしばらくした後、
彼は航空会社に職を得た。 

 

横浜の根岸にできたばかりの国際空港が、
彼の職場になった。
 

南太平洋のパラオに飛び立つ最初の日は、

両親と姉たちが見送りにきてくれた。 

 

彼の操縦する飛行機が、乗客を乗せて
初めて空を飛んだ時

彼の両親は、夢をかなえた息子の姿を誇りに思った。

 

半年の操縦経験を積んだ後、
彼は上司の勧めで見合いをし、
結婚した。
 

仕事柄、留守になりがちだったが、
妻は、彼の両親に暖かく迎えられ

毎日がとても幸せだった。

 

結婚して一年経った日、
彼に初めての子供が生まれた。

 

男の子を授かった彼は、かつて自分が
暖かく家族から迎えられたように

生まれたばかりの男の子を抱いて、
心から喜んだ。

 

その翌日、彼は軍から招集されることになった。

 

彼が操縦士の養成施設に入学した年から、
二等操縦士の資格を得た後、

半年の間、軍で飛行訓練を受けることが
義務付けられていた。

 

短期間のうちに技術を高められるし、

予備士官として軍にも籍を置くことで、
別の収入が得られる。

 

結婚した後は、むしろ、会社と軍から
手当てがもらえる選択をしたことを

感謝した。

 

若いのに、世間並み以上の生活を、
妻や息子や両親にさせてあげられることが

彼の誇りでもあった。

 

だが、その選択が、確実に彼の運命を変えていった。

軍での仕事は、今までと何も変わらなかった。

 

ただ、旅客機は輸送機に代わり、
乗客が軍人になり、

土産物や旅行者のトランクが、
米や弾薬に代わっただけだった。

 

彼は、飛びなれた横浜とパラオのルートを
淡々と往復した。

 

戦争に加わっている自覚など全くなかった。

 

だから、飛行ルートの先から向かってくる
戦闘機を見ても

別段気に留めなかった。

 

戦う意思などないのに

応戦する武器など持っていないのに

トンボのように小さな戦闘機は、

雲の切れ間に姿を消して

太陽を背にして

彼の飛行機を追いかけた。

 

決して話し合うことなどできない空の上で

彼は大きな飛行機を巧みに操って

逃げることしかできなかった。

 

彼の操縦技術は卓越したものだった。

 

まるで闘牛士が、興奮した牛の突進を
マントでかわすように

彼の飛行機は、戦闘機の攻撃をかわし、

燃料を浪費させた。

その技術の高さが、戦闘機の操縦者の闘志に
火をつけた。

 

そして、何度かの銃撃の中で、戦闘機が放った弾丸は

操縦席の彼の眉間を貫いた。

 

彼の飛行機は、無言のまま、
青い青い海の上に落ちていった。

 

戦闘機はそれを見届けると

何事もなかったかのように雲の中に消えていった。

 

彼の飛行機がどこに落ちたのかはわからない。

彼の飛行機に誰が乗っていたのかもわからない

彼が何を感じていたのかもわからない。

 

ただはっきりしているのは

小指の先ほどの小さな鉄の弾が

彼の命と未来を奪ったということだ。

 

彼は、家族に愛されて生まれた。

誰よりも優しい少年だった。

 

飛行機にあこがれて空を飛ぶことを夢見た。

 

だが、夢をかなえて、幸福な人生を歩みだした瞬間
彼は小指の先ほどの小さな鉄の弾に
全てを奪われてしまった。
 

彼は、両親にとってこの世でたった一人の息子だった。

彼は、姉たちにとってこの世でたった一人の弟だった。

彼は、妻にとってこの世でたった一人の夫だった。

彼は、生まれてきた子供にとって、たった一人の父親だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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HN:
松沢直樹
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1968/03/03
職業:
著述業
趣味:
冬眠
自己紹介:
沈没寸前のコピーライター ライターです。ヤフーではなぜか「小説家」のカテゴリにHPが登録されてますが、ぢっと手を見る日々が続いております。
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