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作家 松沢直樹のブログ
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ぼくはミケ。
ことしのはるに、うまれたこねこだよ。
パパとママと、きょねんうまれたおにいちゃんと、おねえちゃんたちとくらしてるんだ。
でもね、ぼくはいつもひとりぼっち。

おにいちゃんやおねえちゃんたちは、はしるのがはやい。
でも、ぼくはのろまだから、いつもあそんでもらえない。

おにいちゃんやおねえちゃんたちは、おさかなをつかまえるのがじょうず。
でも、ぼくは、みずたまりのおみずもこわいから、おさかななんてつかまえられない。

「やあい、やあい、のろまでこわがりんぼ」

おにいちゃんやおねえちゃんたちは、いつもそういって、ぼくとあそんでくれない。
パパやママも、のろまでこわがりんぼなぼくが、すきじゃないみたい。

おうちのなかでも、ぼくがいると、いつもみんな、つまらなそうなかおをするんだ。

おともだちもできないから、ぼくはいつもひとりであそぶのがすき。
ぼくはねんどであそぶのがすきなんだ。

ねんどをね、どんなかたちにすることもできるんだよ。
まえあしでね、なんどもねんどをふんで、おおきなかたまりにして、それからいろんなかたちをつくるんだ。

きょうも、おにいちゃんやおねえちゃんにあそんでもらえなくて
ねんどで、だいすきなロバのおじいさんのかたちをつくってあそんでた。
そしたら、ほんとうに、ロバのおじいさんがおさんぽにやってきた。

「やあ、ミケちゃん、こんにちは。なにをしているの?」
「ねんどであそんでるの。ロバのおじいさんをつくったの」

「おやおや、ねこちゃんにしてはめずらしいね。ねこちゃんは、おさかなをつかまえたり、きのぼりをしたりするのが、すきなこがおおいんだが」

ロバのおじいさんは、そういって、しろいまえあしでおひげをなでた。
おじいさんは、ぼくがつくったねんどがきらいなのかな。
せっかくロバのおじいさんのかたちをつくったのに。ぼくはがっかりしちゃった。

「でも、ずいぶんじょうずだね」
「ほんと?」
「うん、おひげのところがそっくりだ。おじいさん、とてもうれしいよ。ミケちゃん、ありがとう」

「ほんと? ほんと? ばんざあい」
「おやおや、ミケちゃん、いったいどうしたんだい?」

 ぼくは、ほめてもらえたのがうれしくて、ロバのおじいさんに、おにいちゃんやおねえちゃんに、あそんでもらえないことをはなした。かけっこや、おさかなをつかまえるのがすきじゃないこともはなした。

ねんどであそぶのだけが、とくいだっていうこともはなした。

「そうかそうか。ねこだから、かけっこやおさかなとりがじょうずじゃなきゃいけないなんてきまりはない。ミケちゃんは、ねんどあそびが、だいすきなままでいいんだよ。おにいちゃんやおねえちゃんから、あそんでもらえないからって、がっかりすることはない。

よくかんがえてごらん。おにいちゃんやおねえちゃんは、ミケちゃんみたいに、ねんどをじょうずにこねることはできないだろう?」

「うん、でもね……ほんとうは、おにいちゃんやおねえちゃんとなかよしになりたいんだ。おさかなとりや、かけっこがじょうずになったら、ぼくのことをすきになってくれるかなあ」

「いいことがある。ねんどのかわりにパンをこねなさい」
「パンをつくるの?」

「そうさ。おじいさんがつくりかたをおしえてあげよう。ただのパンじゃないぞ。ねんどでじょうずにかたちをつくったみたいに、パパやママや、おねえちゃんやおにいちゃんのかたちをしたパンをつくるんだ。そしたら、きっとなかよしになってくれるよ」

「ほんとう?」
「ほんとうさ、じゃあ、おじいさんがつくりかたをおしえてあげよう。おじいさんのおうちにいらっしゃい」

それから、ぼくは、ロバのおじいさんのせなかにのって、おうちにいった。そしておじいさんからパンのつくりかたをおそわった。

さいしょはむずかしかったけど、すぐにじょうずになった。ねんどをこねるみたいに、パパやママや、おにいちゃんやおねえちゃんのかたちをじょうずにつくった。

「おやおやずいぶんじょうずにできたね。じゃあ、やいてみようか」

ロバのおじいさんにてつだってもらって、ぱんをかまどのなかにいれたら、すごくいいにおいがしてきた。
「さあ、もういいはずだぞ」

ロバのおじいさんがそういって、かまどのなかからパンをだしてくれた。
だいせいこうだった。パパ、ママ、おにいちゃんやおねえちゃんにみんなそっくりだった。

「これはすごくじょうずにできたねえ」
「パパやママやおにいちゃんやおねえちゃん、よろこんでくれるかな? なかよくしてくれるかな?」

パンはじょうずにやけたけど、ぼくはしんぱいだった。だってまだ、いちどもあそんでもらったことがないんだもん。

「だいじょうぶ。ぜったいによろこんでくれるよ。さあ、おそくなったから、おうちにつれていってあげようね」

ロバのおじいさんのせなかのうえにのって、おうちまでつれてきてもらった。
だけど、パパやママにあう、ゆうきがなかなかでなかった。

「だいじょうぶ。このパンさえあれば、パパもママも、おにいちゃんもおねえちゃんも、みんなよろこんでくれるよ。げんきをだして」

おじいさんにいわれて、ぼくはおうちのなかにはいった。

「ミケ、どこにいってたの、こんなにおそくまで」
ママにしかられた。やっぱりみんなとなかよくしてもらえないのかな。

「だいじょうぶ。ゆうきをだして」
でも、そのとき、ロバのおじいさんがいってくれたことをおもいだしたんだ。だから、ゆうきをだして、ママにいってみた。

「あのね、パパとママと、おにいちゃんたちと、おねえちゃんたちにプレゼントがあるの。つくるのにじかんがかかったから、おそくなったの」

ぼくはそういって、パンをひとつずつテーブルのうえにおいた。パパのかお、ママのかお、とらぶちのおにいちゃん、さばとらのおにいちゃん、ちゃとらのおねえちゃん、みんなのかおのかたちをしたパンを一つずつおいた。

「わあ」

みんながそういった。おこられるのかな。そうおもってつい、めをとじちゃった。でもおこられたりしなかった。

「すごいねえ、ミケちゃん。ありがとう」

パパもママも、おねえちゃんもおにいちゃんもはしってきて、みんな、ほっぺにすりすりしてくれた。うれしくてなみだがでちゃった。

「なんだか、たべるのがもったいないね」

パパがそういってくれた。なんだかげんきになったから、もっとゆうきをふりしぼって、パパとおはなしした。

「パパ、あのね、ぼくね、おおきくなったら、パンやさんになりたい。おにいちゃんやおねえちゃんたちみたいに、かけっこやおさかなとりは、いくらがんばってもうまくならないし、すきじゃない。でもパンなら、すごくじょうずなものをつくれるよ。パパはおさかながとれるようになれっていってくれたけど、ぼくはパンがつくれるようになりたい」

そういうと、パパもママもすこしこまったかおをした。でも、すぐにいいよっていってくれた。おにいちゃんもおねえちゃんも、ほめてくれた。ぼくは、はじめてみんなからほめてもらえて、すごくうれしくなった。

「じゃあ、ばんごはんは、ミケがつくったパンをごちそうになろうかな」

パパがそういうと、ママもおにいちゃんやおねえちゃんも、さんせいしてくれた。

みんなでなかよくテーブルにすわって、パンを食べた。

「おいし~い」

「おにいちゃんたちがとってきてくれた、おさかなといっしょにたべるともっとおいしいね」

ぼくがそういうと、おにいちゃんたちがわらった。
そのひ、ぼくは、はじめて、おにいちゃんやおねえちゃんたちと、まるくなっていっしょにねた。すごくすごくしあわせだった。

それから、ぼくは、まいにちおにいちゃんやおねえちゃんとあそんでもらえるようになった。パパもママも、おさかなとりやかけっこがじょうずになれっていわなくなった。

それどころか、ぼくがつくったパンをおいしいっていってたべてくれるんだ。すごくたのしいよ。

さいきんはね、おにいちゃんやおねえちゃんのぶんだけじゃなくて、もりのみんなのぶんもパンをやくんだよ。

ぼくは、もりのパンやさんになるんだ。

まいあさパンをやくと、りすさん、くまさん、うさぎさん、そしてみんなが、おいしいっていってパンをたべてくれるんだ。おともだちもたくさんできて、とてもしあわせだよ。
こなだらけになって、まっしろになっちゃうのが、ちょっとこまるけどね。

おにいちゃんたちみたいに、かけっこやおさかなとりは、へたっぴいのままかもしれないけど、ぜんぜんへっちゃら。

ぼくは、せかいでいちばんパンをつくるのがじょうずなねこになるんだ。

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プロフィール
HN:
松沢直樹
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1968/03/03
職業:
著述業
趣味:
冬眠
自己紹介:
沈没寸前のコピーライター ライターです。ヤフーではなぜか「小説家」のカテゴリにHPが登録されてますが、ぢっと手を見る日々が続いております。
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